ポルシェバルブタイミング3

ポルシェのM64エンジンのバルブタイミングを実際に取ると
ダイヤルゲージの数値は、こうなります。

これがマニュアルの値

インテークオープンが  4度before TDC   
インテーククローズドが 56度after BDC

エキゾースト オープンが 44度 before BDC
エキゾースト クローズが 4度  after TDC

実測の値

インテークオープンが  3度before TDC   
インテーククローズドが 54度after BDC

エキゾースト オープンが 41度 before BDC
エキゾースト クローズが 1度  after TDC


これは、964のティプトロの車両で実測によるデータです。

微妙に上のメーカーのマニュアル数値と違います。

これは、ティプトロと言うこともあり微妙にEXのオーバーラップを変えて組みました。

ほんのわずかですが、、、、

カムのスライドプーリーで言うとほんの一山の違いです。

1ノッチづらすことでクランクの数値が大体3度ほど動きます。

では、実際にどのようにバルタイを取っているか?

ドキュメント風に話したいと思います。

まずクランクプーリに分度器をSETします。

これはなるべく直径が大きいものがいいです。

大きいほうが値が正確だからです。

そして、ポルシェは水平対抗なので片バンクづつバルタイを取ります。

これは、V型エンジンと同じです。

1番のTOPをダイヤルゲージで出し、その位置を分度器の0度に合わせます。

これがすべての基準になります。

そしてダイヤルゲージを当てるロッカーアームのタペット調整をします。

基準位置は、0.1mmです。

これはあくまでノーマルの数値です。

ターボなどのハイチューンの車両だともう少し広めに取ります。

あと使用するオイルの粘土なども影響します。

まずおおよその値を出すためにある程度の位置でカムのノックピンを入れます。

このある程度の位置というのは、ピストンとバルブが干渉しない位置のことです。

まるで見当違いの位置にピンを入れるとバルタイを取っている最中にピストンとバルブが
突いてしまうということがあります。

長めのスピンナーハンドルで回していると少し重たいなと思う状態で簡単にバルブが曲がってしまいます。

案外解らないでピストンタッチさせている場合があります。

だから、バルタイの作業は、慎重に行う必要があります。

ある程度の位置にピンをいれてその位置のバルタイを取ります。

開き始め、閉じ、中心角

これらすべてを取ります。

そうすると  

エキゾースト オープンが 31度 before BDC
エキゾースト クローズが 11度  after TDC

という数字が出たとします。

この数値は明らかにEX のオープンが早過ぎますよね!

普通の数字より10度早いです。

ということは、INは10度遅いですよね!

ポルシェは2バルブなのでIN とEX は同じカムで動きますから当然片方が遅ければ片方が早いわけです。

だからバルタイもIN EX どちらかを取れば勝手にもう片方が決まってしまう訳です。

でも数値上は、すべてを把握する必要があります。

続きです。

EXが10度早いということは、10度分戻してやればいいのです。

要するにクランクの分度器の数値が41度のときにEXを1mmリフトした位置にもってくれば
いいのです。

実際の作業としては、クランクを41度に持って行きカムのスライドピンを外しカムが1mmリフト
しているところで改めてスライドピンを刺す。

これでカムのバルタイを41度にもっていけるわけです。

国産のエンジンのスライドプーリーの調整をしたことがある人なら
なんとなく感覚がわかると思います。

スライドプーリーは中身がバカ穴になっていて6角ボルトで位置決めをします。

ポルシェは、ボルトを締めて位置決めをするのではなくその位置でピンを刺す。

やっていることは同じなのです。

以上がバルタイ調整のおおよその流れです。

これをIN EXの数値を見ながらいい位置を探します。

そして片バンクが終われば もう片バンクを取ります。

口で言うとすごく簡単に見えますが、素性のわからないカムのバルタイを
取るとなるとこの作業だけで平気で1日はかかります。

ちなみにノーマルのカムの実測でのカムの最大リフト点は、 IN 118度  EX112.5度 でした。

この数値のほうが国産のエンジンに慣れた方には、わかりやすいと思います。

それでは、実際のポルシェのカムの作用角は、、、、、

1mmリフト 時で  

インテークオープンが  3度before TDC   
インテーククローズドが 54度after BDC

エキゾースト オープンが 41度 before BDC
エキゾースト クローズが 1度  after TDC

インテークが180+3+54=237度

エキゾースト180+41+1=222度  

なんだたいしたことない数字と思うかも知れませんがこれは、1mmリフト時です。

ちなみにカムの作用角は、0mmリフトで測ります。

ポルシェは少し特殊なので0.2mmリフトで測定します。

このときの数値が

インテークオープンが  27度before TDC   
インテーククローズドが 78度after BDC

エキゾースト オープンが 55度 before BDC
エキゾースト クローズが 17度  after TDC

です。

測定位置が0.8mm変わっただけでこれだけ数字が変わります。

作用角は、IN 27+180+78=285

EX 55+180+17=252

ちなみにトヨタの4AGのバルタイを載せておきます

インテークオープンが  5度before TDC   
インテーククローズドが 65度after BDC

エキゾースト オープンが 54度 before BDC
エキゾースト クローズが 16度  after TDC

0mmリフト時に IN  250度
        EX  250度 となります。

こう考えるとポルシェがいかにノーマルの状態でハイカムなのかが解ります。

ポルシェを含めベンツやBM フェラーリなど外車は、ノーマルでもかなりのハイリフトの
カムが装着されています。

今回は、読んでいて眠たくなった人がかなり多かったのではないでようか?

でも実際にエンジンをチューニングするということは、こういうことをやるんです。

この数値がよかった、、、あの数字は、ダメだった、、、などと
こんなことを繰り返しながらいい場所を探すわけです。

車に限らず物事というのは、
案外簡単に見えることのその奥は、果てしなく奥深い場合があります。

例えば、料理の世界などは、そうですよね!

簡単に作っている料理に見えても実は、とんでもない隠し味がいっぱい仕組まれている
わけです。

でも、ただ食べているだけでは、気づかないことがほとんどです。

それが当たり前になり自分でも作れるんじゃないかと簡単に思ってしまいます。

その世界に入ってこそ初めて気づく世界があります。

今回は、その奥の部分を少しでも解っていただければと思い記事にしました。

バルブタイミングについての参考書

http://hiro-shop.biz/idaf/data/6188.html