ポルシェのバルブタイミング

読者の方から質問をいただきました。

> ポルシェのカムタイミングが理解できません。
> ごく普通のカム表示で1ミリ バルブリフト時圧縮死点前何度とか
> センターローブとかは解るのですが。 カム表示の中に「タイミ
> ング・・ミリ」と言うのが有ります。 具体的には964カレラと
> 964CUPは同じカムで、セットする時にこのタイミングを2.1ミリ
> から1.1ミリに合わせる。 と有るのですが さっぱり
> 解りません。

これは、ポルシェの純正の整備マニュアルを見られての質問だと思うのですが
まず純正の整備マニュアルというのは解説書ではありません。

基本的にはプロのメカニック向きに作られていますので余計な事は
一切書かれていないものです。


まずこの質問で感じるのは、バルブタイミングをどのぐらい理解されているのか?
ということです。

このレベルが解らないと答えようがないのです。

また、素人が踏み込むにはかなり難しい分野でもあります。

単純に上の質問に答えると、ポルシェにはバルブタイミング用の冶具があり
それを指定の場所にSETしてロッカーアームが1.1-2.1リフトするところに
合わせなさい。

ということです。

機械的な整備をするなら実に簡単な事ですよね!

時間もそれほどかからないからメーカーのライン組みだと重宝します。

ベンツなんかもカムそのものに冶具をつけてエンジンを組み上げます。

一般的な整備方法だとこの方法が1番速くて正確です。

また、この方法だとバルタイを理解していない人でもエンジンが組めるわけです。

国産車のタイミングベルト交換を思い出してください。

ご丁寧に合いマークがありすべての合いマークを合わせることで誰でも
正確にエンジンが組めます。

もっともタイミングベルトなので定期的な交換が必要な車の場合は、
このような設計にしておかないとメンテナンスが大変です。

ポルシェやベンツなどの外車は、国産でいう合いマークの変わりに冶具を使っている
だけなのです。

だから冶具を持っていない人はエンジンを組めない?

そういうことになりますよね!

でも実際は、本当にエンジンを知っている人やチューナーはこんな冶具使いません。

だってもし、違うカムを組む場合は、こんな冶具は何の役にも立たなくなるからです。

ここで初めてバルブタイミングというのを理解しなければならなくなる訳です。

バルブタイミングとは、簡単に言えばピストンの位置に対してカムがどのような状態で
あるかを数字で表したものです。

ポルシェのM64 のNAエンジンの場合は、

インテークオープンが  4度before TDC   
インテーククローズドが 56度after BDC

エキゾースト オープンが 44度 before BDC
エキゾースト クローズが 4度  after TDC

です。

これは、インテークのバルブがTDC(圧縮上死点)前の4度で開き
閉じるのが BDC(圧縮下死点)後 56度  という意味です。

私は、ポルシェの純正の冶具を使ってエンジンを組んだことがないので
確かめたわけではないですが冶具をSETしてマニュアルにあるリフトの
数字に合わせると勝手にバルタイはこの数字になるはずです。

でもここでひとつ考えてみてください。

ノーマルのバルタイとは、すべてがノーマルの数値の場合でないと意味を
なさないということです。

たとえばノーマルのバルタイを組むときのタベットクリアランスは、
0.1mmです。

たとえばこれを0.15mmにしてエンジンを組みたい場合、すべての数値は
違ってきます。

要するに応用が利かないということです。

タペットクリアランスが0.05mm違えばバルブの開き始めも当然変わってきます。

また、リフト量の違うカムを入れる場合も全然変わってきます。

メーカーの整備書というのは、あくまでもすべてがノーマルであるということが
基準であるということを理解する必要があります。

メーカーの整備書の写真にクランクプーリに分度器を付けている写真は、
見たことがないと思います。

そんなめんどくさいことをしていては、時間工賃が合わなくなるからです。

昔は、バルブタイミングを知っているだけでそこそこの商売が出来たらしいです。

それほどエンジンにとって重要な部分でもあります。

1度には、話しきれないのでまた次回お話します。

バルブタイミングについての参考書

http://hiro-shop.biz/idaf/data/6140.html