締め付けトルク

車は、それぞれの部品が鉄、アルミ、プラスチックで出来ています。

それぞれを繋ぐのは、溶接、接着剤、リベット、ボルトナットです。

この中で1番身近なのは、やはりボルト、ナットであると思います。

これがないと始まらないといわれるぐらい重要な部品です。


車のボルト、ナットは、特別な素材や、ピッチをしているので普通のホームセンターなどでは取り扱っていません。

普通の規格ネジは、10mmの頭ならピッチが1,5

12mmなら1,75というのが普通です。

しかし、車の場合は、10mmで1,25   12mmで1,5  というのが普通です。

またボルト自体の強度も全然違います。

一般的な、ネジでは、強度に耐えられず吹っ飛んでしまう部分がいっぱいあります。

昔プロペラシャフトのネジを純正ではなく普通に売られているネジを使ったことがあるのですが
ほんと、あっという間に千切れてしまいました。

一つ一つの部品がすごく考えて作られているのが車というものです。

エンジンなどは、特に通常見ることのないボルトナットが使われています。

コンロットボルトやヘッドボルト、、、、

これらは、そのエンジン専用に設計された特殊ネジです。

細ネジと呼ばれる特殊ピッチのボルトもよく使われています。

最近のエンジンは、塑性域の締め付けが使われることがほとんどです。

塑性域とは、ボルトが、1度伸びて戻る性質を利用した締め付け法です。

始めに3kで締め付けてその後その位置から90度回し、さらに90度回す。

これが塑性トルクといわれる締め付け法です。

使われるボルトもテンションボルトと呼ばれる特殊ネジです。

このボルトは、ほとんどの場合再使用はしません。

通常トルクが塑性トルクに変わったのは、90年前半ぐらいだったと思います。

車でいえば、AE86などの4AGの前期モデルでは、通常トルクで後期モデルでは、塑性トルクが用いられています。

シルビアのSRなども塑性トルクに変わってからのエンジンです。

ベンツなどは、300Eなどに用いられたM103エンジンでは、すでに塑性トルクを用いていました。

このエンジンの締め付けトルクは、強力で、始めに7Kで締め付けてその後90度、90度と締め付けていきます。

通常のスピンナーハンドルでは、回しきれないぐらいの力が必要となります。

また、締め付けている途中に本当にこれで大丈夫なの?と思うぐらいのトルクをかけます。

完全にボルトが伸びるのを感じることが出来るぐらいに、、、、

これも特殊なボルトと相手が鉄ブロックだから出来るのだと思います。

さすがに、1度使用したボルトは2度と使いません。

もうひとつ特殊なボルトを紹介すると、やはりローターリーエンジンのボルトになります。

これほど長いボルトを使う車は、ローターリー以外に存在しません。

全長30cmほどもあるボルトを20本近く使用します。

これだけの多くのボルトを締め付けに使うロータリーは、このボルトの締め付けの加減でエンジンの特性が変わるとといわれています。

ロータリー職人は、この部分は、トルクレンチを使わず自分の感覚で締めていきます。

昔の3ピースのアペックスシールだと、締め付けている途中でアペックスが剥がれる音がするのは
有名な話です。

機会があれば車のエンジンのボルトを注意深く見てみることをお奨めします。

めったに見ることが出来ないボルトナットに出会えることでしょう。