★クランクメタル
車のエンジンに重要部品のひとつとしてクランクシャフトを支えるメインベアリングがあります。
ウエットサンプに国産エンジンの場合、エンジンオイルの流れは、クランクベアリングを通り、コンロッドのほうへ
流れていきます。
通常の量産車のほとんどが、メインベアリングの片側にだけ溝を掘ったタイプのベアリングを使っています。
この溝を通ったオイルがクランクに中の溝をとおりコンロッドへと流れます。
片溝タイプの場合は、1回転に半分しかクランクにオイルが供給されないということになります。
そこで登場するのがTRDやNISMOなどの社外品のメタルで、このタイプはメタルの両方にオイル溝が
切ってあります。
こうすると常にクランクの中にオイルが回りコンロッドメタルへのオイルの供給もスムーズになります。
でもチューニングパーツというのはある部分が良くなればある部分が悪くなるということが
かならずあります。
両溝タイプのメタルにすると悪くなる部分として、クランクに対してのメタルの当たり幅が少なくなります。
そうするとクランクメタルの耐久性に問題が発生します。
そして、何よりの問題は、オイルの流れが今までより良くなるということは油圧が下がるということです。
もともと、オイルポンプの要領に余裕のない国産車の場合、これは、かなりエンジンに厳しい状態となります。
強化オイルポンプの設定のあるエンジンならいいのですが、設定のないエンジンの場合、注意が必要です。
よく86などのオイルポンプのリリーフのところにシムをかませて油圧を上げるという手法がありますが、
いくらリリーフの圧力を変えようがリリーフが開いたときの全体の油圧は変わりません。
これを勘違いしている人が多いです。
全体的な油圧を上げるには、オイルポンプそのものの要領を大きくしてあげるしかないのです。
強化オイルポンプの設定のないエンジンに両溝タイプのメタルは、
エンジンを良くに知っているチューナーには、使いたくない選択です。
チューニングパーツの多くは、そのいい部分しか書いていない場合がほとんどです。
それを訳のわからない雑誌が適当な記事を書きユーザーに間違った情報を教えている場合が多々あります。
「レースカーにも使用されています。」という名文句がよくありますが、
本当は、「レースカーにしか使用できません。」
が正しいものの伝え方であると思うことがあります。
1点豪華主義のパーツを市販車に組んでもその機能を発揮しないばかりか、
ノーマルより悪くなる場合があります。
車は、いろいろなパーツが組み合わされて動いているので、
1番大切なのは、やはり全体のバランスであると思います。